平成25年度 東山会会報

会員からの便り


神戸大学大学院工学研究科
機械工学専攻
機械ダイナミックス研究室 助教

肥田 博隆

平成 15 年卒業(第 62 回)
  

本稿を執筆した晩夏からは少々時期外れではありますが,春先,特に就職活動が盛んな時期になると「東海圏の学生は地元志向が強い」との話題をよく耳にします。具体的な数を見ると,本年度,東海4県からの名大への入学者は全体の約73%にも上り,他の旧帝大における地元からの進学率と比べて突出して高いのこと。教育,研究機関としての魅力もさることながら,東海圏の就職環境が全国的に見て恵まれていることが名大を選ぶ大きな理由であるのは,学生たちとの会話を通じて実感しております。

 かくいう私自身も東海4県の1つ,岐阜出身で,学位取得後も名大で研究者として「地元就職」した身であります。入学から十余年にわたり通学,通勤を続けておりましたが,この4月に神戸大学に異動し,引き続き研究,教育職に当たっております。生まれて初めて東海圏から出て関西に移り住んで間もなく半年を迎えますが,時が経つにつれて名大の研究環境は大変恵まれていたこと,また,立地や生活環境にも利があったことを様々な形で実感しております。

 私の主な研究テーマは,”MEMS”と呼ばれる微細加工技術を軸とした物理量センサ・アクチュエータや,micro-TAS(total analysis system)と呼ばれる,小型の生化学分析用デバイスの開発,評価です。ご存知の方もいらっしゃるとは思いますが,名大には「マイクロ・ナノシステム工学専攻」があり,日々,最先端の研究に取り組んでおります。しかし,神戸大には当該の専攻はなく,マイクロデバイスの作製に必要な加工装置の整備も現状では不十分です。これまでは名大内の施設で作製出来たデバイスも,完成まで他の機関と神戸大を何度も行き来することになります。

 ただ,もちろん悪いことばかりではありません。(半ば必然的ではありますが)より効率良く,かつ柔軟に研究を進めるか,以前より熟考する習慣が付いてきた様に思います。そのきっかけの一つは,神戸大の立地にあると思っております。六甲山の裾野にあり,標高は約200m。大学から望む神戸港の早朝や夜の景色からは,一日の始まりと終わりが強く感じられ,自然と頭の切り替えが促されます。あくまで私見ではありますが,文字通り風通しの良い環境に心身を置くことは成長の段階で非常に大切なことであり,将来の然るべき時に「地元」に貢献出来る様,今後も精進を重ねる次第であります。

 最後に,西の地より東山会会員の皆様のご健康と益々のご活躍をお祈り申し上げます。

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