平成24年度 東山会会報

学内近況


東山会 庶務理事
名古屋大学大学院工学研究科
機械理工学専攻 教授

梅原 徳次

大学の世界展開力強化事業
「修士課程国際共同大学院の創成を目指す
先駆的日米協働教育プログラム」

  

1.はじめに 
 文部科学省では,大学改革の取組が一層推進されるよう,国公私立大学を通じた競争的環境の下で、特色・個性ある優れた取組を選定・支援しています.具体的には,H24年度は,表1に示す以下の支援があります.この中で機械系関連から提案したグローバルCOEプログラム「マイクロ・ナノメカトロニクス研究教育拠点」がH20年度に採択され,マイクロ・ナノメカトロニクスを基盤とする新しい学際的な研究分野の構築を通して新分野に果敢に挑戦する若手人材・リーダーを育成することを目的として,実践的な教育プログラムが実行されています.H23年度には,さらに大学の世界展開力事業「修士課程国際共同大学院の創成を目指す先駆的日米協働教育プログラム」が採択されました.大学の世界展開力事業は,国際的な枠組みで、高等教育の質の保証を図りながら、日本人学生の海外留学と外国人学生の戦略的受入を行うアジア・米国等の大学との協働教育による交流の取組を支援することを目的としています.具体的には,日米協働教育プログラムとして,名古屋大学とUCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス分校),ミシガン大学との間で,単位認定可能な新しい教育プログラムを創設することが求められています.既に,米国の両大学と名古屋大学は,留学時に授業料不徴収にする協定が結ばれており,留学の実績はあります.しかし,経済的理由や,語学力の不足のため,多くの学生が留学する体制にはなっておりませんでした.そこで,機械系の巨陽教授が中心となったワーキンググループで提案書を作成し,採択されました.今までに実施しました本プログラムの内容を紹介致します.

 *大学の世界展開力事業のHP 
http://www.jsps.go.jp/j-tenkairyoku/gaiyou.html

   
表1 文部科学省の大学教育改革のための競争的支援(H24年度)
1.国公私立大学を通じた大学教育改革の支援
                (平成24年度予算額:399億円)
   (1) 世界的なリーディング大学院の構築等(333億円)
     グローバルCOEプログラム(131億円)など
   (2) 大学教育の充実と質の向上(66億円)
2.大学教育のグローバル化のための体制整備(103億円)
    大学の世界展開力事業(27億円)など
3.高度医療人材の養成と大学病院の機能強化(55億円)
   (1) 高度医療人材養成機能の充実(25億円)
   (2) 大学病院の機能強化(30億円)
 
 *文部科学省参照HP
http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/kaikaku/index.htm

2.概要
 本プログラムでは、日本の「ものづくり」の中心に立地する名古屋大学の特長を活かした魅力ある修士課程国際協働教育を実施します.UCLA及びミシガン大学との緊密な連携により、共同プログラム内の大学間の単位の相互認定を実現すると共に、成績管理、学位授与の共同実施を図ります. また、本プログラムの実施を通して日米両方の各研究チーム間の共同研究を促進し、各分野の世界に発信できる先端研究拠点を形成します.

 本プログラムは日米の院生と教員が共に参加する教育プログラムであり,その実施期間は2ヶ月から12ヶ月まで多様であります.2年間の修士課程における既存の教育プログラムに追加実行され,自在に選択参加できる特徴を持ちます.
 具体的には,2ヶ月間の短期コース、6ヶ月間の中期コース、12ヶ月間の長期コース及び定期ワークショップを日米の両地で同時に実施する国際・学際教育プログラムを新たに構築することにより、毎年30〜50名の大学院修士課程の学生を相互派遣します.これにより、工学研究者を志す学生の減少や英語力の不足、世界的な知見の低下などの懸念を解消し、国際競争力の強化に大いに貢献できる若手人材を育成します.

 特に,従来の留学は,1年間の滞在を基本とするため,留学したければ1年卒業や修了が遅れる事が前提でした.そのため,留学を躊躇する学生が少なくありませんでした.一方,本プログラムでは短期コースと中期コースを設けたため,留学しても博士前期課程の学生が2年間で修了を可能にするプログラムであることに特徴を持ちます.

 今までに実行したプログラムは以下のようです.詳細は,本プログラムのHPをご覧ください.
http://www.juacep.engg.nagoya-u.ac.jp/index.html

(1)第1回学生ワークショップ(H24年3月8日,12日)
 本年3月には,教員と学生が米国に行き,UCLA及びミシガン大学で日米会わせて100名以上の参加者の共同のワークショップを開催しました.学生相互は研究発表,教員相互は今後の本プログラム実施のための討論を行いました.UCLA及びミシガン大でのワークショップの開催の様子を図1に示します.

図1 UCLA(左)、ミシガン大(右)での名古屋大学学生の研究発表

(2)ミシガン大学の教員による英語による特別セミナー(H24年2月,3月)
 本年2月,3月にミシガン大学より倉林教授とLaine教授にお越し頂き,特別セミナーを行いました.図2に特別セミナーの様子を示します.

図2 ミシガン大 倉林教授(左)とLaine教授(右)による特別セミナー

(3)サマープログラム 名古屋大学(H24年7月1日〜8月30日)
 ミシガン大学から8名の大学院生と1名の学部生を受入れ,名古屋大学において2ヶ月間各研究室で研究インターンシップ,英語による集中講義,日本語学習及び企業見学(トヨタ自動車,三菱自動車)を行いました.図3に,参加者集合写真,集中講義及び企業見学の様子を示します.

図3 ミシガン大学生のサマープログラムの受講の様子

(4)第2回学生ワークショップ(H24年8月30日)
 サマープログラムの最後に,9名のミシガン大学生による名古屋大学における研究インターンシップの報告会が各研究室の指導教員も参加し開催されました.図4にその様子を示します.ワークショップ開催後,サマープログラムの修了証書が授与されました.


図4 第2回学生ワークショップの様子

(5)サマープログラム ミシガン大学(H24年8月1日〜9月30日)
 名古屋大学から16名の工学研究科の大学院生をミシガン大学に派遣し,2ヶ月間各研究室で研究トレーニングを受けました.図5に,各研究室で研究トレーニングを行っている様子を示します.

図5 サマープログラム ミシガン大学における研究トレーニングの様子

(6)第3回学生ワークショップ(H24年9月27日)
 ミシガン大学でのサマープログラムの締めくくりに,16名の名古屋大学院生による研究発表会がミシガン大学で開催されました.受入研究室の教員や学生が参加し開催されました.図6にワークショップ開催後の集合写真を示します.


図6 第3回学生ワークショップの集合写真

3.おわりに
 今後,本プログラムは,名古屋大学機械系の教育及び研究を世界レベルとして維持するために,益々活発に実施する予定であります.実行に当たり以下の機械系の世界展開力実行委員会 運営委員の先生方と協力し,進めております.諸先輩のご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします.

世界展開力実行委員会 運営委員:梅原徳次 教授,巨 陽 教授,福田敏男 教授,大日方五郎 教授,田中英一 教授,社本英二 教授,関山浩介 准教授,長田孝二 准教授,上坂裕之 准教授,鈴木教和 准教授,山西陽子 准教授,森田康之 講師,伊藤靖仁 特任講師,徳田 暁 特任助教
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